“スリット式防波堤を利用した波力発電”の可能性調査を開始しました
大阪市立大学は、福井県嶺南地域において、「スリット式防波堤を利用した波力発電」の実証試験を実施する可能性を検証するため、関西電力株式会社と共同で調査を始めました。この調査は、福井県が進める「エネルギー研究開発拠点化計画」(※1)の取り組みのひとつとして、昨年11月以降、本学と関西電力が福井県と協力して準備を進めてきたものです。
※1福井県の特徴を活かし、エネルギーの総合的な研究開発拠点地域とするため、平成17年3月に福井県が策定。「安全?安心」、「研究開発機能の強化」、「人材の育成?交流」、「産業の創出?育成」の4つの柱に、国、市町、大学、産業界などが参画して様々な施策を展開しています。
調査の概要について
「スリット式防波堤を利用した波力発電」とは、スリット式防波堤(図1)内部の遊水室に水車を設置し、波がスリットを通過する時の速い流れを利用して水車を駆動し発電する方式(図2)で、本学が研究を進めているものです。波力発電は波の運動エネルギーを利用するもので、防波堤に打ち寄せる波は、スリットを通過して遊水室に流入?流出するため、スリットで加速した往復流が周期的に生じています。このエネルギーを最大限効率的に回収利用するため、実際の防波堤における波の特性を詳細に把握し、水車の最適化研究開発に反映していきます。一例としてサボニウス型水車(図3)は、水車翼を図のような構成配置とすることで、常に一方向に回転し、配置角度を任意に変えた多連結構造の組み合わせ等により、波の特性にあった水車形状を明らかにできると考えます。
波力発電に期待される効果
海洋エネルギーの一形態である波力発電は、海上設置の方式が先行的に試験研究されてきましたが、これに比べ、防波堤に設置する一体方式は1基当たりの発電出力が小さいものの、設置コスト面や、船舶航行や漁場操業などへの影響懸念解消などで利点があります。防波堤にある複数のスリットに個々に設置するため、既存のスリット式防波堤への設置や新設時の一体型防波堤などの導入面、さらにメンテナンス面でもフレキシビリティがあり、地産地消のクリーンなエネルギー源として、期待できると考えます。
調査を実施する場所は港外側がスリット構造になっている敦賀港鞠山地区防波堤で、波がスリットを通過するときの流速、防波堤前面の波高等、波浪データの計側を行います。スリット式防波堤を利用した波力発電の可能性調査のために、実際の防波堤で波浪データの計側を行うのは今回の敦賀港での調査が初めてになります。
波浪データの計側は、今年9月5日から平成26年8月まで実施し、計測したデータならびに国土交通省が公表している波浪データを使用して、波力発電のシミュレーションによる理論検証、水車の設計等を行う予定です。
図1 スリット式防波堤
スリット形状の開口部を有し、これに連なる内部に空洞の遊水室を設けた防波堤(打ち寄せる波を消波?エネルギー減衰させる構造)。
図2 波力発電システムの概略図
遊水室に水車を設置し、スリットを通過して加速流入?流出する波のエネルギーにより駆動、発電するシステム。
図3 サボニウス型水車(一例)
波の特性に合った水車構造の最適化に関する研究開発を推進中。
本発表資料の問い合わせ先
大阪市立大学大学院工学研究科 都市系専攻
教授 重松 孝昌
電話:06-6605-3078
E-mail:shigeurban.eng.osaka-cu.ac.jp