これまでの定説を覆す成果!透析患者に活性型ビタミンDを投与しても 心血管リスクは低下しないことが明らかに
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この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆12/12 毎日新聞
◆12/12?? MedicalResearch.com
◆12/17 化学工業日報
◆12/17 m3.com
◆12/25 HEALTHDAY JAPAN
◆12/26 CareNET
本研究のポイント
◇透析患者へ活性型ビタミンDを投与しても心血管リスクは低下しないと判明
◇全国108施設の976名を対象に、4年間にわたって予後を追跡
◇国際的認知度が高く、世界五大医学雑誌の一つでもある「JAMA」(IF=47.7)へ掲載
概要
大阪市立大学大学院医学研究科 血管病態制御学の庄司哲雄研究教授、代謝内分泌病態内科学 の稲葉雅章教授らの研究グループは、血液透析治療を受けている慢性腎臓病患者に活性型ビタミンDを投与しても、心血管疾患のリスクは低下しない(心血管疾患発症率:投与群=21.1%、非投与群=17.9%)ことを明らかにしました。これまでは、透析患者では活性型ビタミンD欠乏が原因となり、骨ミネラル代謝異常を生じ、心血管疾患に悪影響を与え得るため、活性型ビタミンDを投与することで、心血管疾患が減らすことができると考えられていました。庄司研究教授らの研究グループはその定説を検証するため、全国108施設の976名の透析患者(20~80代の男女)を活性型ビタミンDを投与するグループ、非投与の2群にランダムで割り当て、その後4年間追跡を行いました。その結果、予想とは反し、活性型ビタミンDを投与した透析患者の心血管リスクは低下しない(むしろ上昇傾向)ことが明らかになりました。4年間の追跡率は97.9%と非常に高く、信頼性の高いデータといえます。本研究成果は米国医師会雑誌『JAMA』に2018年12月12日(水)午前1時(日本時間)にオンライン掲載されました。
※なお、本研究では副甲状腺ホルモン(PTH)が高くない患者を対象としており、活性型ビタミンDが標準治療とされる二次性副甲状腺機能亢進症を有する症例は対象外としています。
■掲載誌情報
発表雑誌:JAMA(IF=47.7)
論文名:Effect of Oral Alfacalcidol on Clinical Outcomes in Patients Without Secondary Hyperparathyroidism Receiving Maintenance Hemodialysis
著者:Tetsuo Shoji, Masaaki Inaba, et al. “The J-DAVID Investigators”
掲載URL:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2718066
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?研究者からのひとこと
意外な結果でした。本研究では副甲状腺ホルモン(PTH)の高い患者さんを除外しているので、PTHが高い患者さんでの活性型ビタミンD治療の意義を否定するものではない点にご注意ください。
研究の背景
透析患者では心血管疾患を引き起こすリスクが著しく高く、その予防方法が求められています。これまでの研究で、血圧やコレステロール管理を行っても心血管リスクは低下できないことが示されており、骨ミネラル代謝異常の是正が有効であると期待されていました。そのような中で、活性型ビタミンD使用中の患者は使用していない患者と比較して、死亡率、心血管死亡率、心血管疾患発症率が低いという観察コホート研究※が多数報告され、ビタミンDは「長寿ホルモン」ではないかと考えられるようになり、ランダム化比較試験による確認が求められていました。本研究はその確認を目的に計画し、10年がかりで実施しました。
※コホート研究…研究対象となる疾患にかかっていない人を大勢集め、長期間追跡を続けることで、ある要因の有無と病気の発生の関係性を調査する研究のこと。必ずしも因果関係を証明するものではない。
研究内容
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血液透析治療中の976人の慢性腎臓病患者を対象に、活性型ビタミンD内服をする投与群と使用しない非投与群にランダム割付し、48カ月の追跡中に生じる心血管イベント(疾患)を両群で比較しました。結果は右図のとおり、統計学的な有意差はないものの、投与群は非投与群よりも25%リスクが高まる傾向が示されました。また、死亡率についても両群で有意差は認められませんでした。
期待される効果
30年以上の歴史の中で、活性型ビタミンDによる治療が透析患者にみられる骨?ミネラル代謝の是正に効果があり、骨病変予防に対する有益性は確立されています。本研究の結果が有益な薬剤の適正使用に役立つことを期待しています。今後は、透析患者の中でも活性型ビタミンDの投与により心血管リスクの低下する群と低下しない群を事前に見分けることができるような方法がないか、検討を進めたいと考えています。
資金情報
本研究は日本腎臓財団からの研究助成を受けて行いました。