2021年度ダイバーシティ研究環境実現 グローバルシンポジウム
開催のお知らせはこちら
平成29年度採択の文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」は、大阪市立大学(代表機関)、大阪教育大学、和歌山大学、積水ハウス株式会社の連携機関で取り組みを開始し、5年目を迎えました。
今年度のシンポジウムは、ドイツの大学の副学長をはじめ、内外のゲストを招いて、2月14日(月)にオンライン開催し約200名が参加しました。
【報告①】「研究環境のジェンダー?エクイティを目指して」
|
鍋島氏からはまず、本補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」の取り組みについて説明がありました。その後、大阪市立大学の過去5年間の実績として、女性教授比率は平成28年の10.7%が竞彩篮球单场购买3年には14.0%に上昇し、人数も31名から41名に10名増加したこと、10名のうち9名は理学、工学、医学の理系3研究科であったとの報告がありました。 鈴木氏は大阪教育大学の取り組みについて、男女共同参画のみならず、より包括的なダイバーシティの推進を目指して組織がリニューアルしたことを報告しました。その取り組み事例の一つとして、大阪市との合築事業に対して「オールジェンダートイレ」等の設置を要望し、実現する見込みであることを紹介しました。 金川氏は和歌山大学の取り組みについて、アンケートから判明した課題「小1の壁」への対策として、小学1年生の子を持つ親に「子の世話を行うための休暇」を設けたとの発表がありました。また、SOGIに関する基本方針及び学内対応マニュアルを整備し、性別に関わらず使用できるトイレや個室、多目的トイレ等のハード設備の改修?増設を行ったことを報告しました。 |
【講演会】「ドイツの大学におけるダイバーシティとジェンダー平等の促進:ベルリン自由大学の経験から」
Verena Blechinger-Talcott (ベルリン自由大学 副学長、政治経済日本学[Institute of East Asian Studies] 教授) |
|
Blechinger-Talcott氏は、ドイツの大学におけるダイバーシティとジェンダー平等の発展の経緯を紹介し、問題解決への取り組みについて説明しました。ドイツでは1980年代に女性の問題を担当する「ジェンダー平等オフィサー」が設置され、1990年代から2000年代にかけて関連の法整備が進められました。そこには、女性に影響を与える政策に関わる人事評価や執行委員会への参加が必ず認められるなどの権限が定められています。近年ではジェンダー平等を単に男女平等という観点からだけではなく、ダイバーシティという広範囲な観点で、差別禁止を実現する方向へと社会における重点が変化しており、それに対応した包括的なガイドラインが整備されています。ベルリン自由大学では州の法律「ジェンダー平等法」に則り、ダイバーシティの概念を取り入れた様々な取り組みを行っています。イノベーションを促進したジェンダー平等プロジェクトに対して研究資金を提供したり、ジェンダー平等に対する目標を掲げ、達成したところにインセンティブを与えるなどの事例が紹介されました。 |
【報告②】「女性研究リーダーがさらに地域で活躍するために」
|
河崎氏は積水ハウス株式会社の女性研究者育成について、男性従業員の1か月以上の育児休業完全取得推進や、女性管理職候補者研修(ウィメンズ カレッジ)等の取り組みを紹介しました。また、今年度から開始した大阪市立大学との共同研究プロジェクト「住まいにおける子どものオンライン学習に関する研究」についても説明があり、在宅勤務とオンライン学習を同時で行う際には「音の干渉」が課題であることがわかってきたとの発表がありました。 本氏からは、女性リーダー活躍のための、大阪商工会議所の取り組みについて報告がありました。企業の問題解決を支援するために、イノベーションの創発や優秀な人材の確保?定着をサポートする事業を展開していて、女性研究リーダーが地域でさらに活躍するためには、大学と企業の女性リーダー同士の連携強化が重要だと述べました。 |
【パネルディスカッション】「アカデミアにおけるジェンダー?ギャップをいかに解消するのか?」
|
? ? ? ?? ? ? ? ?? |
ウスビ氏からは、ジェンダー?ギャップを考える上での視点や実践について京都精華大学の事例を紹介し、マジョリティである男性教員の意識改革が重要だと訴えました。 治部氏は、日本のジェンダー?ギャップの現状や課題について、理系分野に女子学生が少ない問題を取り上げました。中高生の段階で数学や理科の成績がよい女子が大学進学の時点で理工系を選択しないのは、男女の背負う期待の違いや、中学?高校の先生が持つジェンダーバイアスの存在を指摘し、その意識を変えなくてはならないと述べました。金澤氏は、助教、講師、准教授、教授と上位職になるにつれて女性研究者比率が低くなっており、「水漏れパイプ現象」が生じていて、特に工学、理学分野で顕著であることを紹介し、上位職登用に際して心理的に、また組織的に「ガラスの天井」のハードルがあることを指摘しました。 |
参加者アンケートでは、国内外の様々な立場からの鋭い視点で、大変興味深いディスカッションだったと多数の好評をいただきました。